貯蓄型保険はおすすめしませんし、私は入っていません。私が資産形成できた要因の一つは、貯蓄型保険に入らなかったことだと思っています。なぜ魅力的に見えて、多くの人が入ってしまうのか。私なりに分析しましたので、加入する前に検討してみてください。
貯蓄型保険とは
貯蓄型保険の代表的なものに、終身保険・個人年金保険・学資保険があります。
- 終身保険:死亡保障が一生涯続くとともに、貯蓄性も兼ね備えた保険。
- 個人年金保険:保険料を積み立て、契約時に定めた年齢から年金として受け取る保険。老後資金の準備を目的とします。
- 学資保険:子どもの教育資金を準備するための保険。満期や進学のタイミングで祝い金・満期金を受け取れ、契約者(親)が亡くなった場合は以後の保険料が免除されるのが一般的です。
なぜ魅力的に見えるのか
(ア)保険料が無駄にならないように見える(掛け捨て保険よりお得に見える)
貯蓄型保険は死亡保障を得ながら貯蓄もできるので、一見すると保険料が無駄にならない気がします。対照的に「掛け捨て保険」は、「捨てる」という言葉がもったいない印象を与えます。これは言葉のマジックです。実際、掛け捨て保険は基本的に解約返戻金が戻ってきませんが、貯蓄型保険は戻ってきます。
(イ)年末調整の保険料控除が魅力的に見える
新個人年金保険料控除が最大4万円得られます。「4万円控除」といわれると、4万円得した感じがしますよね。でも、実際は違います。
年間保険料40,000円の場合、控除額は次のとおりです。
40,000円 × 1/2 + 10,000円 = 30,000円
この3万円は、税金を計算する所得から差し引かれる金額です。所得金額600万円の方は所得税率20%なので、
30,000円 × 20% = 6,000円(所得税)
住民税分(約2,400円)を加えても、節税効果は合わせて約8,400円。「4万円」のイメージとはかけ離れていることが分かります。
(ウ)利回りがお得に見える
満期がある商品は、満期まで待てば当初定めた利回りが得られます。普通預金金利が0.4%程度のご時世で、3〜4%の利回りは魅力的に見えてしまいます。
(エ)自動で貯蓄ができる
「ほっとくと使っちゃうから、強制的な貯蓄になる貯蓄型保険でいい」という人が周りによくいます。でも、強制的な貯蓄なら投資信託の積立や定期預金でもできます。わざわざ保険である必要はありません。
具体的な商品設計をみてみよう
特定の商品をおすすめしたり、解約を勧めたりすることが目的ではありません。仕組みを理解するための例として取り上げます。
例:積立利率変動型個人年金保険「プレミアカレンシーM3」
設計内容
- 運用期間10年、米ドル建て、円貨払込金額1,000万円
- 契約時費用4.1%、ドル円160円
- 一時払保険料 62,500米ドル、目標値140%、目標金額1,400万円
- 積立利率4.30%、実質利回り3.86%
主な特徴
- 死亡給付金額は、その日における積立金額・解約返戻金額・基本保険金額のいずれか大きい金額
- 運用期間満了時には年金原資額を指定通貨建てで受け取れる
- 解約返戻金額の円換算額が目標値に到達したら、自動的に円建ての終身保険に移行する
- 運用期間満了時には、①年金受取 ②一括受取 ③終身保険へ移行 ④運用期間の更新、から選択
- 積立利率=平均指標金利+調整率-保険契約関係費率
- 年金受取期間中、保険契約関係費として受取年金額に対し1.0%の費用がかかる
- 解約返戻金額=積立金額×(1-市場価格調整率) ※市場価格調整率はより複雑な式で算出される
契約者のリスク・注意点
- 契約時費用として、外貨建て10年であれば4.1%の費用がかかる
- 市場金利の変動や保険会社の費用により、解約時に損失が生じるリスク
- 為替変動リスク(年金原資額・死亡給付金額・解約返戻金額は為替レートの変動により損失が生じる可能性)
- 一括受取時の差益への課税(契約日から5年超の一括受取は所得税+住民税の対象)
私が不要だと考える理由
(ア)自分が理解できない商品は買わないほうがいい
貯蓄型保険の詳細を理解できる人は、多くないと思います。私は金融機関に勤めていたこと、金融商品の内容を理解するのが好きなことから、ある程度は中身を把握できますが、市場価格調整率や解約返戻金などを完璧に理解できているわけではありません。というより、解約時にしか確定しない要素もあります。自分が他人に説明できない複雑な商品には、そもそも入るべきではないと思います。
(イ)手数料が高い
上記の例では契約時費用として4.1%かかります。1,000万円加入する場合、41万円もの費用がかかる計算です。
運用として考えるなら、もっと低コストな選択肢があります。たとえば米国の社債だけでなく国債や政府機関債もまとめて1本で分散投資できる王道ETF「iシェアーズ・コア 米国総合債券市場ETF(AGG)」の経費率は0.03%。利回りは時期によって変動しますが、足元では4%前後です。
死亡保障(1,000万円)が欲しいだけなら、年齢や条件によりますが、30代であれば月1,000〜2,000円程度の掛け捨て保険で備えられます。
(ウ)拘束期間が長い
10年間など、長期間にわたって資金が自由に使えません。現金の流動性は非常に重要です。10年という長い期間に何が起こるかは分かりません。いざというときに使えることは、実はとても大切です。
(エ)目的をはっきりさせると不要だと分かる
貯蓄型保険の目的が「貯蓄」であれば、自分で貯蓄をすればいいだけです。保障と貯蓄・運用を切り分けて考えると、保険に貯蓄機能を求める必要はないと気づきます。
(オ)外貨建ての場合、為替リスクを負うのは自分
外貨建て商品では、保険会社は為替リスクを一切負っていません。為替は安定しているとお思いの方もいるかもしれませんが、値動きは意外と激しいです。10年前のドル円は106円程度でした。160円を基準とすると、約33%も変動していることになります。
どうすればいいのか
目的を切り分ければ、シンプルな方法で十分です。
(ア)保障が欲しい人 → 定期保険(掛け捨て保険)に加入する
私のおすすめは、メットライフ生命の「スーパー割引定期保険」です。非喫煙・優良体の条件を満たせば保険料がぐっと安くなり、コストパフォーマンスが高いのが理由です。喫煙の有無や健康状態によって保険料が変わるので、まずは自分の条件で見積もってみてください。
(イ)株価変動が嫌な人 → 貯金・国債で備える
貯金で備える場合
メインバンクの定期預金・普通預金で十分です。預金金利の高い銀行のキャンペーンを探す人もいますが、口座開設や解約の手間(時間コスト)を考えると割に合わないことが多く、私はおすすめしません。
為替リスクを取りたくない人
個人向け国債が選択肢になります。2026年6月募集分の利率は、変動10年が1.74%、固定5年が1.86%です(いずれも税引前)。元本割れがなく、年率0.05%の最低金利も保証されているため、預金の一歩先の置き場所として手堅い選択肢です。
利回りを求めて為替リスクを取れる人
日本国債より高い利回りが欲しい方には、米国の投資適格債にまとめて投資できる「AGG(iシェアーズ・コア 米国総合債券市場ETF)」があります。経費率は0.03%と低く、利回りは時期により変動しますが、足元では4%前後です。ただし米ドル建てのため、為替変動で円換算の評価額が上下する点には注意が必要です。
(ウ)利回りが欲しい人 → 投資信託で運用する
よりリスクを取って運用したい方は、NISA枠を活用して eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) を購入するのがいいと思います。全世界の株式に1本で分散投資でき、信託報酬も低水準です。長期でコツコツ積み立てるのに向いています。
保障は保障、貯蓄は貯蓄、運用は運用。目的ごとに分けて考えるだけで、貯蓄型保険の多くは不要になります。魅力的に見える商品ほど、一度立ち止まって「自分はこの仕組みを説明できるか?」と問い直してみてください。
まとめ
貯蓄型保険が魅力的に見えるのは、「保険料が無駄にならない」「保険料控除でお得」「利回りが良い」「自動で貯蓄できる」といった印象によるものです。しかし一つずつ分解すると、その多くはイメージ先行で、実際のメリットは見た目ほど大きくありません。
私が貯蓄型保険を不要だと考える理由は次の5つです。
- 自分が理解できない複雑な商品である
- 手数料が高い(例では契約時費用だけで4.1%)
- 拘束期間が長く、流動性を失う
- 目的を分けて考えれば不要だと分かる
- 外貨建ては為替リスクを自分が負う
大切なのは、保障・貯蓄・運用を切り分けて考えることです。保障が欲しいなら掛け捨ての定期保険、安全に置いておきたいなら預金や個人向け国債、利回りが欲しいならNISAを活用した投資信託。それぞれに適した手段を選べば、貯蓄型保険に頼る必要はほとんどありません。
「みんな入っているから」「なんとなくお得そうだから」で決めず、自分の目的に立ち返って選んでいきましょう。
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