なぜお金持ちはますますお金持ちになるのか?
世界的ベストセラーとなった経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』には、現代の格差を解き明かす最も有名な命題があります。
それが「R > G」という単純にして強力な不等式です。
- R:資本収益率 (Return)。株式、不動産、債券などの資産から得られるリターン。
- G:経済成長率 (Growth)。国全体の成長率や、労働者の賃金上昇率。
ピケティが歴史的データを分析した結果、長期的にみてR(平均4~6%)はG(平均1~2%)を上回る傾向が続いています。これは、「働いて得る労働収入」よりも、「資産を持っていることによる収入」の方が、はるかに早く増えるという資本主義の構造を示しています。
R > G の衝撃的な現実
たとえば、年5%で回る投資を100万円から始めれば、15年で約200万円になります。一方で、賃金が年1%しか上がらない場合、15年後の給与は1.16倍にしかなりません。
資本を持つ者は複利の力で加速度的に資産を増やしますが、持たない者は時間とともに相対的に豊かさが目減りしていくのです。この構造は、もはや資本主義の「宿命」と言えるでしょう。
「現金のみ」の資産構成が抱える重大なリスク
では、「現金で貯金しておけば安心」でしょうか。
残念ながら、そうとも言えません。もちろん、緊急時の備えとして十分な現金を確保することは大切です。しかし、資産のすべてを現金のみで保有し続けることが、現代においては最も大きなリスクとなりつつあります。
ここ数年、世界的にインフレ(物価上昇)が続いています。 コロナ後の需要回復、エネルギー価格の高騰、地政学的リスク、脱炭素への転換コスト――。
一時的な要因ではなく、構造的に物価が上がりやすい時代に突入しています。
- インフレの恐ろしさ: 仮に物価が毎年2%ずつ上昇すると、10年後にはいまの100万円の価値が実質約82万円(※)に目減りします。
- 政策目標も「インフレ」: 日本は長くデフレに苦しんできましたが、いまや日銀も「安定的なインフレ率2%」を政策目標に掲げています。
貯金だけでは、労働収入の微増分もインフレに食い潰され、資産が目減りしてしまうのです。 この現実は、私たちに「資産を守る」だけでなく、「資産をインフレ以上に育てる」発想を強く求めています。
※100万円 ÷ (1+0.02)^10= 82.03万円
👉 参考記事:インフレの幻想|日本の現状と個人が取るべき対策
資産を持つ人と持たない人の「決定的な格差」
R>Gという構造と、インフレによる現金の価値目減りの組み合わせは、貧富の格差拡大を加速させています。
日本銀行の調査でも、金融資産を持つ上位層が、国内の金融資産の大部分を保有しているというデータが示されています。
- 資産増加のメカニズム: 株式や不動産価格が上がると、資産を持つ人の評価額は増え、さらに配当金や家賃収入が再投資されると、雪だるま式に資産が増え続けます。
- 格差の構造化: 資産を持たない人は、貴重な労働時間を費やして得た収入を消費で消してしまい、「お金がある人ほどお金を増やせる」仕組みから取り残されてしまうのです。
社会全体でこの格差を是正するのは難しいのが現実です。だからこそ、私たち個人ができる最善かつ唯一の行動は明確です。
―― 自分も「資産を持つ側」に、いますぐ回ること。
貯金だけでは守れない時代: リスク資産を保有せよ
では、具体的に何をすればよいのでしょうか?
答えはシンプルです。貯金の一部を「リスク資産」に振り向け、資本主義の仕組みを味方につけることです。
リスク資産とは、短期的には値動きがあるものの、長期的にインフレや通貨安に対して強く、リターンが見込める資産のことです。
- 具体的な選択肢: 株式、債券、REIT(不動産投資信託)など。特に株式は、企業が利益を上げ続ける限り価値が上がる「実物資産」的な性質を持ち、長期投資に最適です。
- 最強のツールを活用: つみたてNISAやiDeCoを活用すれば、税制優遇を受けながら少額から長期・分散投資が可能です。驚異の複利効果の例: 月1万円を年5%で20年間運用できれば、元本240万円に対し、約400万円になります。これは、単なる貯金では絶対に得られないリターンです。
大切なのは、「一攫千金を狙うこと」ではありません。「時間を味方につけ、複利の力でじっくり資産を育てること」です。資産が増えれば、将来の転職、起業、早期リタイアといった人生の選択肢が格段に増えるのです。
👉 参考記事:投資商品の種類と特徴を初心者向けに解説|失敗しない選び方とおすすめ商品例
R>Gの世界を「悲観」ではなく「武器」にする
私たちは、すでに「R>Gの世界」に生きています。労働だけに頼る生き方では、豊かさを維持するのが難しい時代だという現実を受け入れましょう。
しかし、この不等式は悲観すべきものではありません。むしろ、早いうちから資産を運用し始めれば、この構造を「自分の武器」にできるのです。
資産運用というと、「リスクが怖い」「損をしたくない」と感じるかもしれませんが、実際には「運用しないリスク」の方がずっと大きいことを忘れないでください。インフレによって資産を削られ、機会損失を積み重ねていくからです。
💡 結論:いますぐ行動すれば、未来は変わる
R>Gの世界で生き延びるために必要なのは、経済学の知識でも、莫大な初期資金でもありません。必要なのは「いますぐ行動する力」です。
小さな一歩で構いません。
- 今日、NISA口座の開設を申し込む。
- 来月から月5,000円の積み立てを設定する。
働くだけの人生から、資産が働いてくれる人生へ。 それが、この時代を生き抜くための最良の戦略であり、未来の自分を守る行動になります。
―― 資産を持ち、R>Gの波に乗ろう。


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