1.はじめに
最近、スーパーに行くと「野菜、肉、米が高くなった」と感じることが増えました。私の両親も例外ではなく、買い物に行くたびに価格上昇の話題になります。
年金生活に入ったあと物価が上がり続けると、家計が圧迫されやすく「老後のインフレ対策」は避けて通れないテーマです。
そこで本記事では、私が実際に両親へ助言している内容を含め、老後の物価上昇に備える現実的な対策をまとめます。
まず結論からお伝えします。
老後のインフレ対策の結論
- 働きながら年金繰下げで受給額を増やす
- 生活費の一部を働いて補う・支出コントロールを維持する
- 資産の一部を運用し、インフレに負けない資産づくりをする
この記事を読み進めることで、
- 老後に不足しがちな支出の正体
- 年金はどれくらい物価に連動するのか
- 平均支出と年金額から見える「リアルな不足額」
- インフレ対策として有効な運用・働き方・制度活用
が具体的にイメージできるようになります。
インフレについては下記もご参考にしてください
2.老後の金銭面の悩み(よくある不安)
老後に向き合うお金の悩みは多岐にわたります。代表的な声は以下のとおりです。
- 医療・介護費が増えたらどうしよう
- 年金だけで生活できるのか不安
- 住宅ローン・家賃がのしかかる
- 仕事を辞めた後の収入源がない
- 子どもや周囲に迷惑をかけたくない
インフレが進むほど「年金だけで暮らせるか?」という不安は強くなります。
では、その年金は物価にどの程度追いついているのでしょうか?
3.年金はインフレに連動するのか?
結論から言うと、年金には物価スライドの仕組みがあり、物価・賃金に応じて毎年改定されます。
近年は物価上昇を受け、実際に年金額も引き上げられています。
📌 令和7年度は1.9%引き上げ
| 年金種別 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|
| 国民年金(老齢基礎年金)月額 ※満額 | 68,000円 → | 69,308円 |
| 厚生年金(夫婦2人分の標準モデル) | 228,372円 → | 232,784円 |
※出典:日本年金機構「令和7年度の年金額改定について」
年金額の改定ルール等は下記をご参考にしてください。
令和 7年度の年金額の改定について
年金は自動的に物価上昇に合わせて見直されますが、伸び幅が物価上昇を完全にカバーできるとは限りません。
つまり、
物価上昇 > 年金の増加
→ 実質の生活は苦しくなる可能性
ということです。
4.老後の支出とインフレの影響
では、実際に老後の支出はどれくらいでしょうか?
📌 65歳以上・2人以上世帯の平均消費支出
➡ 月 265,898円
(出所:総務省統計局「家計調査報告2024年」)
物価上昇率を 3% と仮定すると…
265,898円 × 3% ≒ 約+8,000円/月
→ 年間約96,000円の負担増
一方で年金は前述のとおり伸びは限定的。
収入と支出の差を見ると…
【平均年金収入と支出の差】
平均年金収入 232,784円
平均支出 265,898円
差額△約33,000円【上記に加えて物価上昇影響】
年金の収入の増加 4,412円
支出の増加 7,977円
差額△3,565円
つまり、年金改定があっても、インフレ率によっては年金収入の増加だけでは生活費の増加分をカバーしきれない可能性があるのが実態です。この「不足分」をどう埋めるかが、老後のインフレ対策の鍵となります。
5.老後のインフレ対策 – できることは大きく3つ
| 対策 | メリット |
|---|---|
| ① 働いて収入を得る | 足りない生活費を補える。社会参加にも◎ |
| ② 年金を繰下げて増額する | 年金受給額が最大84%UP。生涯増額 |
| ③ 資産運用しインフレに備える | 物価上昇による資産目減りを相殺 |
以下で深掘りします。
① 働き続けるという選択
「老後=引退」ではなく、不足分を埋める最も確実な方法は、元気なうちは働くことです。
無理のない範囲で働き続けることは最大のリスクヘッジにもなります。
- 収入が入るため生活費を補填できる
- 外出・社会参加で健康維持にも効果
- 年金繰下げで受給額UPと相性が良い
私の両親も、週数日だけパート勤務を続けています。
働くことが孤独・不安の軽減にもつながると言っています。
② 年金繰下げ受給で増額する
年金は65歳から受給可能ですが、1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額されます。
1年繰下げ=8.4%増。
75歳まで繰下げると最大+84%増額。
| 受給開始年齢 | 増額率 |
|---|---|
| 66歳 | +8.4% |
| 67歳 | +16.8% |
| 68歳 | +25.2% |
| 70歳 | +42% |
| 75歳 | 最大+84% |
インフレ率が3%なら、繰下げ1年分だけで十分に上昇分をカバー可能。
働けるうちは働き、年金を遅らせるのは現実的な戦略です。
📌 注意点(デメリット)
- 受給前に亡くなった場合は不利
- 生活費が苦しい場合は無理をしない
- 健康状態・家族状況で判断が必要
③ 資産運用でインフレに備える
老後世帯の平均貯蓄額は以下です。
二人以上の世帯で世帯主が65歳以上の平均貯蓄額は2,509万円、中央値は1,658万円です。(出所:総務省統計局「家計調査報告2024年」)
資産内訳を見ると、
- 預金 64.9%(元本は安全だが増えにくい)
- 有価証券 19.6%(運用次第でインフレ耐性○)
仮に有価証券501万円を年利5%で運用できれば…
年間約25万円の利益
→ 先ほどの物価上昇による年間負担額4.3万円を十分カバー
預金だけではインフレに弱いですが、
一部を投資に回すだけでリスク分散しながら備えられます。
選択肢例
- つみたてNISA・新NISAでインデックス投資
- iDeCoで老後資金を非課税で運用
- 物価連動国債 or その投資信託
筆者のアドバイス: 私は物価連動国債への直接投資ではなく、物価連動国債に投資をしている投資信託を保有しています。短期での変動はあるため元本保証ではありませんが、長期のインフレ対策として有効だと考えています。
資産運用については下記もご参考にしてください。
- NISAとiDeCo、どちらを優先すべき?|迷ったらNISAでOK
- NISAで買うならこの投資信託|失敗しない選び方
- 【初心者向け】年齢別ポートフォリオとおすすめ投資信託|投資の大原則に学ぶ
- 銀行預金じゃ不安?インフレに強い『物価連動国債』を安全資産に加えるべき理由
まとめ|老後のインフレは「準備すれば怖くない」
今日のテーマを最後に整理します。
- 老後の生活費は年金だけでは不足しやすい
- 物価上昇は年金で完全にカバーされるとは限らない
- 対策は「働く・年金繰下げ・運用」の3本柱
特に、年金+働きながら繰下げ+一部運用は相性抜群です。
老後の不安は、数字で「足りない額」を把握し、対策に変えた瞬間から小さくなります。
明日の生活が不安 → 今日から備える
これがインフレに負けない一番の近道です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 年金はインフレに対応して増えるのですか?
A. 年金は「物価スライド」により、物価や賃金に応じて毎年見直されます。ただし物価上昇率を完全に補えるとは限らず、現状は年金の伸びが物価上昇に追いつかないケースが多いため、追加の対策が必要です。
Q2. 老後の生活費は月いくら必要ですか?
A. 総務省データでは65歳以上・夫婦2人の消費支出の平均は約26.5万円です。年金収入の平均は23万円程度のため、約3万円ほど不足するケースが一般的です。
Q3. インフレ対策として最も重要なことは何ですか?
A. ①働き続けて収入を維持すること、②年金を繰り下げて受給額を増やすこと、③資産の一部を運用しインフレに負けない資産形成を行うこと。この3点の組み合わせが最も現実的です。
下記もご参考にしてください👇
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Q4. 年金繰下げは本当にお得ですか?
A. 1ヶ月繰下げるごとに年金は0.7%増え、1年で8.4%増加します。75歳まで遅らせれば最大84%増。ただし「受給前に亡くなるリスク」や「働けない場合の生活費問題」があるため、家計状況や健康状態を踏まえて検討することが重要です。
Q5. 老後に投資をするのは危険ではありませんか?
A. 生活費全てを投資に頼るのはリスクがありますが、貯蓄の一部(例:1〜3割)で分散投資することで、インフレリスクを和らげられます。短期変動を避け、長期目線で運用することがポイントです。
Q6. インフレに強い資産とは何ですか?
A. 株式・REIT・物価連動国債などはインフレと共に価値が上昇しやすい資産とされています。元本保証はありませんが、預金だけより物価上昇への耐性があります。
Q7. 老後に向けて今からできる準備は?
A. 50代・60代のうちからできることは多く、以下のステップが現実的です。
- 支出の把握と生活コストの最適化
- 新NISAやiDeCoで非課税運用を開始
- 定年後も働けるスキルや職種を検討
- 年金繰下げを視野に健康維持

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