はじめに:不安ではなく、数字と仕組みで考える保険
「社会人になったらとりあえず生命保険」に加入する人は多いですが、感情や雰囲気ではなく、数字と制度を理解した上で判断するのが一番合理的です。
日本には「遺族年金」など、公的保障が非常に手厚い制度があります。
まずは制度をしっかり把握し、「本当に必要かどうか」を冷静に検討していきましょう。
1. 公的保障だけでどれくらいカバーできるのか?
遺族年金の仕組みは意外と知られていませんが、実は非常に手厚い制度です。 まずは、家族構成別の支給額目安を見てみましょう。

計算条件等
- 死亡した夫または妻の厚生年金への加入期間を25年(300月)とし、平成15年4月以降の加入期間がすべて該当するものとして計算しています。
- 子どもは「18歳の年度末を迎えていない」前提で、遺族基礎年金の支給対象となると仮定しています。
- 遺族厚生年金の年額は以下の式で計算:
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 300月 × 3/4
※平均標準報酬額は厚生年金加入期間中の平均月収をもとに計算 - 加入月数が300月に満たない場合でも、300月として算定される特例があります。
- 年金額は2025年度の金額を参考にしています。将来的に物価等の影響により改定される可能性があります。
- 遺族年金(基礎・厚生ともに)に所得税・住民税・社会保険料は課税されません。
- 最新の情報は【日本年金機構の公式サイト】をご確認ください。
遺族基礎年金・遺族厚生年金のしくみ
社会保険に加入している限り、万が一の際には遺族年金が支給されます。
- 遺族基礎年金(子どもがいる世帯向け):約83万円+子ども1人約24万円/年
- 遺族厚生年金(会社員):平均月5〜10万円ほどが上乗せされます
たとえば月収30万円の会社員で配偶者と子供2人なら、
遺族基礎+厚生年金で月額約14万円が見込まれます。
さらに、勤務先に企業年金の制度があれば追加の保障も可能です。
2. 共働きなら、さらに安心材料がある
パートナーが正社員で月収30万円なら…
遺族年金(約14万円)+配偶者の収入(30万円)=月44万円以上の収入が維持される可能性あり。
→ 年収換算で500~700万円ほどの保障が、公的・企業制度を通じて得られています。
つまり、共働きであれば「生命保険なしでも死後生活が回る」ケースは少なくありません。
3. 生命保険が必要な人はどんな人?
以下に当てはまる場合、生命保険の加入を検討すべきでしょう。
- 子どもがいて、自分が亡くなると生活が成り立たない家庭の大黒柱
- パートナーに収入がない/非常に少ない
- 自営業者・フリーランスで公的保障の対象外
この場合、掛け捨てタイプの保険で最低限を補う戦略が合理的です。
4. 生命保険が不要な人とは?
- 独身・子どもなし
- 共働きで収入源が二つある家庭
- 十分な貯蓄がある人
これらに当てはまるなら、遺族年金+貯蓄だけで十分備えられる可能性があります。
5. 保険料は「固定費」。長期でみると無視できない支出に
- 平均年間保険料:35.3万円(生命保険文化センター2024)
- 30年払い続けると総額:1,059万円!
このお金を年利5%で運用すれば 約2,500万円の資産に増えます。
この差は、将来の選択肢や精神的余裕の大きさにも直結します。
6. 私は生命保険に入っていません
- 公的制度・企業制度で最低限の備えがある
- コアとして十分な貯蓄を確保している
- 家族の収入もある
- 保険料を長期投資に回したほうが合理的
→ このような状況下では、生命保険に入る必要性が低かったという判断です。
まとめ:まず制度を知り、必要性を数字で判断する
チェックすべき項目 | ポイント |
---|---|
遺族年金の額 | 年金機構で試算しよう |
公的+企業年金 | 勤務先福利厚生を確認 |
家庭構成 | 独身・共働き・子の有無など |
保険料との比較 | 将来投資とのリターン差を考える |
「なんとなく必要」ではなく「必要だから入る」——
それが、家計と人生の自由を守る最適な方法です。
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